楽園(上)(下)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/02/10
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『模倣犯』の登場人物・前畑滋子を主人公に据えたスピンオフ的な位置づけの作品。「死んだ息子には超能力があったのかどうか知りたい」という中年女性からの依頼。とある夫妻が長女を殺し、時効が成立して火災で半焼するまで自宅の床下に遺体を隠していたという事件の状況を、依頼者の息子は絵に描いていたのだという。事件の発覚は、彼の死後より遥か先の事であるのに。この依頼を受けることにより、前畑滋子は再び他人の人生の暗部へと踏み込んでいく。
圧倒的かつ徹底的な人間描写が過剰なまでに詰め込まれてるのにさくさく読める点、エンタメ性の低い地味な内容でありながら興味を繋ぎ止めて読ませる筆力、おっさんおばちゃんの人情味のある語り口などいつもの宮部節もあり、「描きたいのは『人間』であって『事件』じゃないんですよー」っていうのが満ち満ちてて必要以上の伏線を回収しないところも『模倣犯』の時同様。山荘がらみの事柄がほったらかしになってるのは『模倣犯』を読んでない読者への配慮なのかな。他にもツッコミどころは目に見えてぼろぼろ出てくるけど流石の力技、人の業を重苦しく圧し掛からせながらもおおむね大団円でまずまず楽しめた。