バクマン。(1)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

言わずと知れた、ジャンプの三大原則を悉く無視した『DEATH NOTE』で一世を風靡したコンビの新作。中3男子2人が漫画家を目指す話。

「サイコー」というニックネームがあれど、からかいの念を込めて呼ばれる事が多い主人公の真城最高(もりたか)。文才に秀でる優等生の高木秋人は彼の画力の高さを偶然目にして「俺と組んで漫画を描かないか」と持ちかける。が、かつて売れっ子のギャグ漫画家だった叔父が凋落の末に急死するという過去を持つ最高はすっかり人生に諦観してしまっていた。しかし片想い中のクラスメートが声優を目指していることを知った最高は一転、まんが道を進む決意を固めるのでした、という導入部。

作中には他社の名作タイトルがもじられる事無く登場しており、特にジャンプ周りは徹底的に実名の嵐で、そこだけでも出来得る限り現実に即しようとする雰囲気が感じ取れます。「宅の漫画はエブリデイ・マジック系なんぞに逃げ込む気は毛頭御座いませんのよオホホホホ」的な余裕と覚悟を感じる。

「漫画稼業は博打」「マーケティングとリサーチで作為的なヒットメイキングを」という風な少年らしくないシニカルな視点と「やるからにはジャンプで、それもトップを狙っていく」「18(歳)までにアニメ化、そして結婚!」というような少年らしく無理のあるロマンを追いかけていく視点を同位的に打ち出して描かれる、彼らが夢に賭ける様子は一種独特に映るわけですが、根底には少年漫画の王道が根付いていますよね。解りやすくライバルも出てきたりしますし、この先壁だっていくつも立ちはだかるでしょうし、実は王道の部分で魅せようとしているってのはあるんじゃないかなと思います。

なんだかんだでジャンプ編集部の内情には興味もあるし、現実の社会で、それも構造の複雑な感性と評価の世界を舞台にしてジャンプ的な漫画を描こうという挑戦は素直に応援しようと思いますし、楽しみにしています。