外天楼
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/21
- メディア: コミック
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ロボットが人間社会に浸透した世界観のもと、外天楼と呼ばれる集合住宅密集群を舞台に描かれたSFミステリ。完結。掲載誌は文芸誌「メフィスト」。
まずもう、1ページ目の鼻メガネの時点で単行本派の誰もがいつもの石黒テイストに彩られた、信頼と実績のユニークな作品を期待するはずで、実際冒頭の数話はゴミ捨て場のエロ本についてどうでもいい謎解きを繰り広げる少年たちの話や新米女刑事とベテラン中年刑事のドタバタ推理劇など、ミステリを多く輩出するメフィスト賞出身作家達が名を連ねる雑誌のカラーと作者自身の嗜好が巧く合致した佳作って感じで進んでいくものの、ただの連作短編と思われていたものが怒涛の勢いで繋がっていき終盤で見事な線になっていく様は壮大な叙述トリックを見せられているかのようで膝を打つ他なし。ページを繰るごとに膝を打つ他なし。佳作だなあという印象は読後には傑作だなあという感想に変わりました。メフィスト賞受賞作で言うと浦賀和宏「記憶の果て」を読んだ時と似たような衝撃を漫画で味わう事ができるなんて。いやすごい。シャッポがあったら脱ぎたいくらいでした。ありがとうございました。
あと第6話の犯人の絵にはなんだか駆け出し作家のデビュー作風な野暮ったさを感じる瞬間が多々あったんだけど意識的にタッチ変えてるんだろうか。