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失われた町

失われた町 (集英社文庫)

失われた町 (集英社文庫)

およそ30年に1度起こるという「町」の「消滅」。生活の痕跡すら残さずに、そこに住む人々だけがただ消えていく。そして消えた人々を想って悲しむことはさらなる「消滅」の拡大を助長する――という現象が「災害」として受け入れられている世界で、台風を食い止めるような所業に心血を注ぐ人々を描いたお話。

歴史から音楽シーンからお茶に至るまで、節々に独自の設定が盛り込まれており、用いられたアイディアは『となり町戦争』よりも突飛でキレキレ。だからなのかそれ以外の部分がついてきてないかなあ、というのもありまして。非常にとっつきにくい仕上がりになってる気がするけど、それでも不思議と読ませる力がある――最後まで読んで、もう一度プロローグを読ませるのとか小憎らしさすら覚えるほど。要らない、もしくはもっと縮めて他に書く事あんだろっていうエピソードもあったものの、概ね面白かった。この世界観は使い捨てにしてしまうには惜しいと思いますので、是非この世界設定でいくつか新作書いてもらいたいものです。この後一歩届かなくてもどかしい感じをどうにかしていただきたい。

巡り合わせとか人と人との絆、繋がりといったようなものの描写が時たま、世界を的確に切り取る事が出来る写真家の写真を見たような感覚をもたらしてくれる瞬間もままあっただけに殊更にもどかしい。

そんなわけで、あけましておめでとうございます。