ももんち

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

冬目さんに関しましては『黒鉄』なんとかなりませんかねというのが一番強く抱いている思いでありますので、こっちサイドはほとんど読んでないですけども『イエスタデイをうたって』はネットでもリアルでも悪評をほとんど聞かない。これを読んで定評の片鱗が垣間見えた気がしました。あとはもうとにかくシャープな感じの作品を描いているという印象しかない。

浪人して予備校に通いながら美大を目指す「もも」こと岡本桃寧は色気よりやや食い気に傾いた感じの、掛け値なしに「妹」な少女。彼女を中心に、行方をくらましたまま何年も帰ってこない芸術家気取りの父親に翻弄される家族サイドと気の置けない友人達やちょっと気になる男の子もいちゃったりなんかする予備校サイドを絡めて普通の日常を描写しています。70年代とかそこらへんの少女漫画を目指したという事らしいからか、食パンくわえて通学しだすんじゃないかってぐらいいかにも漫画的ですごくポップ。どっちの側面を見ても、周囲の愛情がほんのりとももに注がれているのが見えるのがたまらないです。掛け値なしの「妹」像が体現されています。

恋愛パートの落としどころもなんとなく好印象。恋愛物への造詣は浅いのでよく解りませんが、安易に「好き」とかそれっぽい感情を露骨に示すとかして、ももの感情に無理に白黒つけようとしなかったところが読後の余韻を考えてもプラスだったんじゃないかなと思います。ヒロインのキャラ的にも、このゆっくりじっくりした流れが合ってると思うので。この文章は纏まってないけど作品の方は巧く纏まってる。