東京チェックイン

東京チェックイン~石塚真一短編集 (ビッグコミックススペシャル)

東京チェックイン~石塚真一短編集 (ビッグコミックススペシャル)

これは2年か3年ぐらい待った。まさに待望だった『東京チェックイン』の単行本化。

北米からネパールまでバックパック一つで旅して回った経験を持つ青年・渡。行く先々で彼が渡して回った紹介状のおかげで、下町にある実家のホテルは外国人御用達状態に。そこにひょっこり帰って来た渡と外国人宿泊客たちとの交流を全7回で描いた表題作とインチキ占い師が口八丁手八丁で活躍する最新読切の『そんでよし!』にデビュー作を収録した短編集になっています。

最終回らしい“溜め”というかなんというか、そんなような解りやすい指標がないまま終わってしまった表題作でしたけど、まとめて今読むとまた格別。カルチャーショックを利用して日本人や諸外国人の気質をハートウォームに演出したお話を読ませてくれるわけですが熱すぎず飄々としてい過ぎない、『岳』と『そんでよし!』の中間的な塩梅。英語力が中学の教科書レベルな自分としては、日常会話の英語の台詞も興味の対象でして、劇中に出て来たワンセンテンスがラストに物語のキーワードとして挿入されるという手法も読後に余韻を残してくれます。

巻末に収録されてるデビュー作『This First Step』は、作画レベルが逆の意味で現在とは比べ物にならない感じなわけですけども、曰く「最初から(ビッグコミック)オリジナルを意識していた」というだけあって解りやすく大人向けな内容。昨今の端正な絵柄に唾を吐くような、今で言うと『深夜食堂』のような画風も味わいを持って迎えられるという雑誌のカラーを熟知しているようにも思えてしたたかさを感じたりもしました。おまけのコラボが少し物足りなかった以外はおおむね満足の一冊。