The Flaming Lips / Christmas on Mars

クリスマス・オン・マーズ

クリスマス・オン・マーズ

制作に7年を費やしたという映画作品。新譜だと思ってポチっとやったらこれがもう思わぬアレで。

クリスマスイブ未明、火星に前哨基地を構えて探査だか実験だかを行いつつ滞在を続ける地球人クルー達を酸素発生装置と重力操作ポッドのトラブルが襲う。宇宙空間で丸裸にされていく彼らは絶望に苛まれ狂気を帯びていくが、突如前哨基地を訪れた外的生命体との出会いにより救いを得る、という概要の映画でございますが。

いわゆる宇宙人役のウェイン・コインはじめバンドメンバー、ウェインのワイフと兄、バンドのジャーマネその他友人知人で構成されたキャストにロケ地はウェイン邸の裏庭やら使われなくなった工場――だったか倉庫だったか――など少し金をかけたホームムービー然とした作りながらテンションの高さとパッションの熱さを感じさせる出来。06年のサマソニでライブ観た感じからしてこれはギャグなのかと思う演出が多々あるのですが、ものすごく真摯に、ものすごく幸福な映像作品が作られています。ウェインの世界観バリバリ。あと音でかすぎ。そこがまた20世紀の愛すべきチープな末来映画という佇まいなのだけども夜観るのは憚られてしまうくらいに音が強調されています。

ワイフの役どころとか重力調整室のシュールな仕様とか踊る生卵とか、およそ整合性のとれない画も「アーティスティック! そしてファンタスティック! それでいいじゃないか」と意味をこちらに丸投げする豪胆さもなんぞのメッセージかと思うようなやっぱり違うようなそんなやりたい放題さが心地良くもあり、それでいて大筋はきちっと通っている不思議な映画です。CDとの2枚組となっていてこちらは全編インスト、映画のサウンドトラックであると同時に新譜として聴いてもしばらくは溜飲が下げられる出来。