FLIP-FLAP

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

高校の卒業式の日に、憧れの山田さんに告白した深町少年。思いがけずOKがもらえるも、交際の条件は街角のとあるゲーセンのとあるピンボール台のハイスコアを更新する事だった、という1巻完結のピンボールブコメ

(写植ではなく)手書きで台詞を書く人はあんまりいなくなっちゃった気がします。今もってそのへんが力強い人というと藤子A先生とか弘兼先生であろうと思うわけですけれど、この人のそれも有力な武器になっていますよね。手書き台詞をあれだけ多用するのはなにげに手間隙かかるだろうに。でもまあこの人の作品において手書き台詞は不可欠だよなと思うのです。『ラブロマ』の時もそう思ってたけど、今作は題材が題材なだけにこの手法がさらにハマることハマること。提供される熱量が段違い。

しらけ世代の典型のような深町少年、線引き無しでピンボールにのめり込む山田さんや彼氏候補共に最初は懐疑的だったものの、ミイラ取り的に始めたピンボールに次第に引き込まれてミイラ化していくことに喜びすら感じるようになる変化の過程が非常にソツなく、作りこんだ感じのあまりない天才肌の仕事が実現されています。ピンボールそのもののドライブ感と、「ただ純粋に楽しみたい」というシンプルだけど今や到達するのが難しくなってきた領域に深町少年が近づいていくという流れに伴う熱さを保ったまま読み切れるという点でも1巻完結は英断。