Sigur Ros / Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust

Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust

Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust

世界のシガロス、えーと、5枚目?

前作『Takk...』はこれまでの集大成的なポジションのアルバムであったと自分では思っていて、次はなにかしら方向転換するんだろうなと漠然と思っていた矢先の去年出たミニ・アルバム『Hvarf/Heim』、とりわけHeimを聴くと、「次はこういう路線で来るのかなあ」というのはある程度予想できてはいましたが。今思うとHeimは次のステップのための実験であったようにすら思えてきますね。

今作ではアコギの旋律がほぼメインとなり、これまでの淡々としたダイナミズムと心地良い絶望感がなくなって、曲の尺もできるだけコンパクトに纏めてユーフォリズムが演出されている気がします。それもとびっきりカッ飛んだ多幸感。どれだけボキャブラリーを動員しても「自由」の二文字にしか行き着かないジャケット然り、確実に我々学の無い低所得層にも聴き易いレベルにまで調節がなされています。

地に足付いた演奏力と派手さを無くして装飾をシンプルに抑える代わりに耐震構造を重視した基礎工事の賜物でヨンシーのヴォーカルを際立たせる“歌モノ”な作りでいい具合に力の抜けてる、概ね好盤ではありますけども、メロディはやっぱりちと弱いかなという印象を受けました。まあバンドとしてはそろそろ転換期かなというのはうっすら思っていた事ですので、このまま牧歌的な方向で進んでいくのか、ちょっとしたインターバルであるのかは解りませんが、このアルバムで彼らが着やせするバンドであるというのをこれ以上もなく誇示してくれた事は事実だと思うんですよ。わー、意外と脂肪ないんですねー、みたいな。ちょっと腹筋割れてるー、みたいな。