Death Cab for Cutie / Narrow Stairs

Narrow Stairs

Narrow Stairs

日本以外でのフェスではヘッドライン級にステータスを伸ばしたデスキャブのメジャー2作目。

彼らほど基礎体力が高く、かつ円熟味も帯びてきてるバンドになると、よっぽどスランプでない限りはある程度水準を満たした作品が出来上がってしまうのは致し方ない所であり、新譜を聴く場合どこかしらノスタルジアに捉われてこう、新作=最高傑作という発展途上感が薄れてきてしまってるというのを痛感するところではあり。クオリティ的にムラがない代わりに刺激が少ないという点がひとつあると思うんですが、今作でちょっとそのへんマイナーチェンジが加えられていて、陰影は濃くなっているのに沈んだ曲調は少ないというある意味矛盾に満ちた音像を確立させています。ギターの厚みが増したM-1から、4分半ものイントロの後にようやくベンの歌声にありつける作りになっているパイロット・シングルM-2、従来のらしさが漲るM-3なんかもありつつそこここでチャレンジシップを窺わせる作りです。もともと一聴では全貌を図りかねる作風の彼らであるだけに、旧譜を知れば知るほど決定的なところに辿り着くにはある程度の聞き込みが求められるところがあるように思います。より聴き込まれる事を目指した誠実な音作りには今年も脱帽。

もはや〜節なんて言われるところに到達していて普遍的な味わいも醸し出しているけれど、このアルバムはひょっとしたら今後に向けてのいいターニングポイントになるのかも。