生活(1)

生活 1

生活 1

アックス連載作品。続きがあるみたいだけど現在は休載中の模様。

ささやかな役得で色々な方面に覚醒した少年と夢はあったような気がするが今は漫然と生きているフリーターの青年が出会い、突発的に世直しもどきをすることに。その過程での何気ない接点から様々な人間が彼らの元に集まってそれは“活動”となり、いつしか枝葉は広がって大きな“組織”へと発展していって町中で幅を利かすようになるんだけど――というお話。初のストーリー物だそうで。

昨今の暗いニュースを見聞きするたびに作者が膨らませていったであろう危機感と防衛本能と妄想が巧く創作物に昇華されています。『僕の小規模な生活』で生活のためにエロマンガを描いた事があるみたいなくだりがあって、この絵柄で真っ向勝負はないだろうなとは思っていましたが、どういう方向性だったのかがこれを読んでようやく端的にイメージできたような気がしました。一応世直し的な事をしているのでバトルも採り入れているわけですが、アクションやギミックも思ったより凝っていて楽しめました。同時に適当に始めた事が段々とおおごとになって自分達の手を離れてしまって居心地を失っていく切なさと、大した信念もなく始めた活動なだけに、新参者が我が物顔で世直し稼業に追随している事に腹を立てるという「俺が最初に始めたのに」みたいな痛い古参感情がないまぜになっているのが面白いです。

巻末にはデビュー作『娘味』も収録。この時の絵柄も好きだなあ。クライマックスのシーンはまさに猟奇的なコント。つくづくモーニング万歳と言わざるを得ません。集められるだけ集めたい福満作品。