ドミノ

ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)

27人と1匹のペット。
日本最大級の乗降者数を誇る東京駅を舞台に、会社員たちや子役の卵たち、俳句サークルのメンバーにミステリー同好会など、接点を持たないそれらの点が小さな出来事からすれ違い、絡み合い、ある事件の渦中に飲み込まれて線となっていく様をどこかライトな筆致で読ませるパニックコメディ。

登場人物がいかんせん多すぎるのでひとりひとりに割かれるページ数は少なく、場面転換も目まぐるしいのですが、彼らの全てがそれぞれの事情で東京駅に集結していく終盤の展開はまさにドミノそのもので、素直に面白い。映像化されたら大袈裟なスローモーションで表現されるんだろうなあここらへんは。

ノリ的には、自分たちが創作物である事を承知しているギャグマンガのような感じに溢れており、リアリティを求める向きには抵抗を覚えるであろう表現も多々ありますけどそこはもうエンタテインメントと割り切って読んだ方が。

人物のキャラをもれなく個性的に仕上げ、拡げに拡げた風呂敷を強引過ぎず鮮やかでもなく淡々ともさせずに普通に畳んでみせるところにこそ味があるような気がします。読後の余韻とかメッセージ性とか、読者に残すものがほとんどないジャンルに労力とアイデアを惜し気もなく使い切れる多才さが輝く一冊。